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評論・エッセイ

作家のすべて教えます 5

 日本語の世界をとるか、それとも英語の世界へいくか、どちらかひとつを選ぶという一種の岐路を、僕は子供のときに体験している。英語の世界へいけ、と言い続けていた父親が用意した岐路だ。
 まだ子供の僕としては、英語でも日本語でも、どちらでもよかった。ただし、直感的に判断するなら、英語のほうが少しだけ分が悪かった。英語が自分にとってどのように役に立つか、あるいは自分が英語をどんなふうに使っていくことが出来るか、そのときの僕にはすでによくわかっていた。英語、特にアメリカのそれは、わかりやすい言語だ。言語とは社会システムだから。
『月刊オーパス』一九九三年十月号

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