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評論・エッセイ

作家のすべて教えます 4

 きわめて夏らしい日のお昼まえだ。小さな岬に両側をおさえられて、小さな湾がある。湾の奥は白い砂の海岸だ。海岸のスロープを上がりきったあたりには、海岸と平行に松林がつらなっている。海岸が終わる片方はちょっとした岩場になっている。海のなかに、あるいは陸に、さまざまな形と大きさの岩が、いくつもある。少しだけ沖へ出たところにある平らな岩は、海で遊んでいる子供たちにとって、海と陸をつなぐ基地のように機能している。その岩へ子供たちは泳いでいき、岩の上で遊び、休み、岩から海へ飛びこんでは、ふたたび岩の上へ上がって来る。
 八歳の僕も、い…

『月刊オーパス』一九九三年八・九月合併号

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