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評論・エッセイ

作家のすべて教えます ある日、作家は裸婦を見る

 ある日の午後、僕は町を歩いている。人がたくさん歩いている。ウイークデーの忙しい時間だ。歩道には並木がある。春の陽ざしが明るい。道路には車がひっきりなしに走っている。歩道に面して建物がつらなっている。僕は待ち合わせの場所である喫茶店に向かっている。
 大きな建物のアプローチを、僕は斜めに横切っていく。この建物の角を曲がり、しばらくいったところの建物の二階に、待ち合わせの喫茶店はある。アプローチのまんなかに彫刻が台座の上に立っている。見るともなく、僕はそれを見る。
 若い裸婦の全身像だ。ただ単に裸婦であるというだ…

『月刊オーパス』一九九四年五月号

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